「彩磁」は波山の彫刻技法を活かした手法で「葆光彩磁」とともに代表的な技法である。素地に薄く浮き彫りされた文様は釉下に施された絵具により際立たされている。写生から生まれる花の意匠は洗練され、彫刻の技を活かした「薄肉彫」で文様を浮き彫し、その上に色を差し透明感のある釉薬をかけた「彩磁」は光を放つ作品である。白磁の光を何色も表現した波山は高度な技法で端正な作を生み出した。「彩磁」技法の白磁に呉須釉の染付に僅かな色絵ギボウシの本作は、余白を広く残した構図で非常に日本的であり情緒的な作品である。背景の余白の白は輝き、蕗の葉の呉須も瑞々しく輝いている。東京美術学校彫刻科で学んだ波山は明治末から大正にかけて独創性を発揮した。波山が田端に築窯した明治30年代は、1900年のパリ万国博覧会で見られたように、アール・ヌーボーが芸術界を席巻していた。しかし波山は、E.ガレのように自然主義的な表現で、生き生きと動植物を描き「素描集」に見られるように西欧の模倣だけとは異なり、修得した彫刻技法や日本の伝統美を土台に波山独自の芸術を創造し表現した。本作には次男佐久良極箱が付き「大正初期の作品である。花と葉に吹きかけの技法が用いられた珍しい作である。上りもたいへんよい。」と述べている。波山40代の作品である。